【シャニP】【シャニPが奢られる⁈】八宮めぐるとガチデート |シャニマス コミュ 切り抜き|ネタバレ注意




冷房が効いているといっても、真夏の日差しがたくさん入ってくるレッスン室では、少し体を動かしただけで汗が滝みたいに溢れてくる。
「ほわ〜…… ほんとだね……っ
持ってきたお水、もう無くなっちゃいそう……」
「とにかく日差しが凄いからね、最近は」
「そうだよね〜!日焼けには気をつけないと……!」
「ふふ、そうだね。それに日傘をさしても、地面の照り返しが凄くて今度は目がやられちゃうから、例えば事務所の前の白い歩道とか。あの上を歩くのは少し気が引けるかも」
「そう? わたしはそういう風景も、夏だー!って感じがして好きだなー!」
わたしは景色が好き。
もっと言うと、人のいる景色が好き。
たとえば太陽さんさんの晴れた日に、楽しそうに街の歩道を歩く親子を見ると、どこに出かけるんだろう、とか、海遊びしたら気持ちいいだろうな〜、とか考えて、こっちまで楽しい気持ちになってきちゃう!
「めぐるちゃん、ところで………」
…? なんだろう。
「今日は、何の日でしょうか……っ?」
「え、なになに!? 何かあったっけ!?」
そう聞いてみても真乃はすぐに答えを言おうとはしないみたいだから、ちょっと考えてみることにした。ふと灯織の方を見ると、なんだか落ち着かなそうにしてる。
あ、もしかして、
「わたしの、たん、じょう、び……?」
「ふふっ、正解だよ……っ!」
「あー! そっかー! そうだったよ!!」
「めぐる、忘れてたの…?」
「えへへ、忘れてた……! ふたりは覚えててくれたんだねー! 嬉しいよー!」
「それは覚えてるよ。忘れるわけないでしょ?」
「ふふふっ、…でも灯織ちゃん、2週間も前からさっきまで、プレゼントどうしよう…大丈夫かな………って、悩んでたよね……っ」
「ちょ、ちょっと真乃、それは言わないでよ…!」
あははっ、だからそわそわしてたんだ!
「でね……っ」
真乃が鳥さんが描かれたかわいいトートバッグから何か出そうとしてる。あ、もしかして、もしかして!
「これ、私たちから……」
それは、太陽の光を受けて輝く綺麗なマグカップ。黄色と青とピンクと白で彩られた、わたし達色のマグカップ!
「きれい……」
思わず口に出ちゃった。それぐらい、きらきらと輝いて見えた。
「こ、これ、真乃と2人で作ったんだ。」
「えーっ!? すごいっ! この、かわいいお花の絵も!?」
「これはねっ、灯織ちゃんが描いたやつだよ……っ!」
「ほんとーっ!? これ、すごい上手だよ!!」
「ふふ、ありがとう。……でもなんで真乃が自慢げなの?」
苦笑いしながら、灯織は照れくさそうにしてる。
でも、本当に上手だなー……!
「そうかな…? 少し失敗しちゃったんだけど」
「あれ?声に出ちゃってた?」
「うん……? …ここの茎のところとか、塗りがはみ出しちゃったりしてて」
「えー!? どこが失敗してるのー!?」
「あと、そのピンクの花の輪郭とか、少し歪んでる」
んんん〜……っ?
「ぜんっぜん分からないや!このまま美術館とかに展示できるくらい、綺麗に仕上がってるよ!」
「ちょっと、それは流石に大袈裟でしょ?」
「ほんとだって! ね?真乃!」
「うん……っ! 灯織先生だね……っ」
「もう、恥ずかしいからやめてよ… ほら、そろそろ始めるよ。オーディションいよいよ明日でしょ? 今日はそのための確認練習なんだから」
…2ヶ月くらい前。かなり有名な制作プロダクションから、事務所に映画のオーディションに出てみないかというお誘いが舞い込んできた。
オーディションだから、もちろんその会社の方からうちの誰かを推薦したってわけでもないんだけど、 “直接話を持ち出されたから折角だし" ってコトで、事務所のアイドルみんなに募集をかけてみた…っていうのが、この機会との出会い。
「うん! 改めて、今日は練習付き合ってくれてありがとね!!」
「うん。めぐるの力になれたら嬉しいよ。 …それじゃあ課題のダンスの所、もう一度確認してみようか──」
映画の名前は『Bring It On』。子どものころ、アメリカのお家で何回も見てた大好きなチアリーディングの映画とおんなじ名前で、しかも似たようなストーリーだったから、なんでなのかプロデューサーに聞いてみた。そしたら、その映画のリメイクを日本版でやるってことらしくて、絶対出たい!ってなって、勢いで応募しちゃった。
「あ、めぐるちゃん……っ、そこの腕を振る動き、もっと大きくした方がいいかも…….っ」
「確かに、かなり大袈裟にやった方がダイナミックさが出て良いと思う」
「わかった! …こんな感じ、かな……っ?」
主人公のずっと真っ直ぐな気持ち、そしてキャプテンとしてチームを引っ張る心の強さが、まだ子どもだったわたしにも感動できた。その憧れになりたくて、わたしは主演のオーディションに出ることを決めた。
「……1,2,3,4! 1,2,3,4! …うん、いい感じ!」
「これで、ひと通り、確認できた、かな……っ?」
「うん……っ! 一番最初のころと比べたら、すっごく良くなってるよ……っ」
「えへへ、やった!」
「……あ、もうこんな時間……!めぐる、前日だし、今日はもうこのくらいにしてあがろうか」
「そうだね… みんな今日は、本当にありがとう!」
──更衣室を出て、廊下を歩く。
マグカップをバッグの中に入れておくのがなんだかもったいなくて、なんとなくマグカップの色んな所を見たり、触ったりしながらリビングに向かった。
なんだかそれが、その時間が、すごく満たされた気持ちになった。
…わたしは幸せ者だなあ。
「ふふ、なにそれ。ほら、前見ないと危ないよ?」
「あれ、また声に出てた?」
「うん。…ああ、ふふっ、さっきのもそういうことだったんだね」
そんなことを言っているうちにリビングの前に着いた。ドアを開けて中に入る。でも2人が入ってこないから、どうしたんだろうと思って振り返ると、2人は顔を見合わせて、
「じゃあめぐるちゃん……っ、私たち帰るね……っ」
「レッスン室の鍵はよろしくね」
そう言ったまま帰っちゃった。なにか急ぎなのかな。
とりあえず鍵をフックに掛けて、名簿に名前と時間を書き入れる。
一人になって、急に辺りが静かに感じた。
………だれかの寝息……?
音のするデスクの方を覗くと、そこにはパソコンの前でうつ伏せになってるプロデューサーの姿があった。
最近、他のプロダクションとのコラボをする、とかっていう計画があるみたいで、外に行っては打ち合わせをしたり、事務所の中でもすごい量の計画書を作ったり。そんなふうに常に忙しいから、あまりわたしの方に時間を割けないって、悔しそうにしてたのを覚えてる。灯織と真乃に練習を見てもらったのも、そういう理由。
近くに寄って見てみると、目の下には少し大きいクマがあった。
大変そう。そう何気なく思ったからなのかは分からないけど、なんだか気の毒な気持ちになった。
…わたしはきっと、大切な人に見守られてる。
“"ずーっとめぐるを応援してるから""
…わたしはきっと、大切な人と一緒にいる。
“"3人一緒なら、きっと……どこまででもいけると思う""
だから、わたしはきっと、つらい事も乗り越えてこれたんだと思う。
プロデューサー……。プロデューサーは、誰が見守ってくれてるの…? どうしてそんなに頑張っていられるの……?
……わたしらしくない。そう思った。
明日は大事なオーディションの当日。プロデューサーのためにも、今から気落ちしてちゃいけないよね。そう思いたかった。
ふと、デスクの横に、ラッピングされた箱を見つけた。リボンのシールが隅に貼ってあるのを見て、嬉しさというよりも、なぜだか申し訳なさを感じてしまった。
そしてわたしは、そのまま事務所から出ることしかできなかった。

後で少し休める所に行きましょうか




プロデューサーのお家の玄関に貼っておいて!
最近忙しくて、プロデューサー憑かれてるでしょ?
だから、お祓いっ♡

ごちそうさまです。(尊死)
